これからこのコラムを通して、皆さまに家事代行のノウハウをお伝えしていくことになりました。
まずは私、大津たまみの自己紹介をいたします。
私は「お掃除・お片づけ・生前整理」のプロとして、30年以上片づけ・清掃業界でお仕事をしてきました。
現在は、日本清掃協会及び生前整理普及協会代表として、日本のみならず海外でもお掃除・お片づけ・生前整理の教育事業を展開しています。最近は海外の方にも家事代行のトレーニングを行っています。
これまでに清掃やお片づけ、生前整理の本を11冊上梓していますので、読まれたことがある方がいらっしゃれば嬉しいです♪
テレビは、NHK「あさイチ」、フジテレビ「ポップUP!」、日本テレビ「スッキリ!」「ニュースZERO」などに出演していますので、画面越しにお会いした方もいらっしゃるかもしれませんね。
このコラムでは、私が実体験で得た知識や情報をお伝えして、スタッフの皆さまがスキルアップしながら充実したお仕事ができるようにお手伝いしたいと思っております。よろしくお願いいたします♪
さて、一回目となる今回は「お客様の心をつかむプロとしての心構え」をお伝えします。
お客様の心をつかむためには、大きく4つポイントがありますので、それぞれ詳しく説明していきます。
家事代行では、お客様からの信頼を得ることがとても大切です。
「技術力を上げれば、お客様が満足してくださる」と思う方もいるかもしれませんが、技術だけでお客様に十分ご満足いただいたり、高い信頼を得るのは難しいといえるでしょう。
技術あってこその家事代行とはいえ「技術4割、マナー・コミュニケーション6割」といって、実は、お客様の印象を大きく占めるのはマナーとコミュニケーションの方なのです。
心理学の研究では『8秒という短い時間で第一印象が決まる』と言われています。「おはようございます」とお客様のお宅を訪問したとき、その挨拶ひとつで第一印象が決まってしまうのです。
お客様が一度受けられた印象は、のちのちまで影響を与え続けていきますので、この第一印象の決定要因を詳しくみていきましょう。
初対面で相手を判断する材料は、第一に視覚情報、目に入った情報が大きく左右します。次に聴覚情報、そして言語情報の順で相手の印象を決めていきます。
これは、アメリカの心理学者のアルバートメラビアンさんが導き出した法則「メラビアンの法則」に基づいています。
この「メラビアンの法則」は、表情や視線など見た目や仕草による「視覚情報」が人に与える影響度は55%、声の大きさや話すスピードなどの「聴覚情報」は38%、会話その物の内容である「言語情報」は7%、としています。
私自身がお客様のお宅に訪問したり、スタッフのトレーニングをしたりしていると、この「メラビアンの法則」が大いに当てはまると感じています。
まず、人に与える影響度が大きい視覚情報、つまり見た目・表情・身だしなみ・姿勢・しぐさについて。見た目がだらしなかったり、表情が暗かったり身だしなみが整っていないと、作業がどれだけ上手にできたとしても、お客様が受ける印象は見た目の方が上回ってしまうのです。
聴覚情報は、声のトーンと大きさ、話すスピードです。
この聴覚情報がお客様に与える印象の中で占める割合は38%です。低い声で「おはようございます」というのか、「おはようございます」と高い声で言うのか。ボソボソで話すのか、お客様にきちんと届くような声で話すのか。
声のトーンや高さを意識するだけで、お客様の印象は大きく変わります。
話すスピードも大切です。高齢のお客様に「おはようございます。よろしくお願いいたします」と早口で言っても、聞き取っていただけません。声の高さやトーンだけではなく、お客様の年代層に合わせたスピードで話すことも意識していくとよいでしょう。
では、話の内容は、どの程度評価に影響を与えるのでしょうか?
実は言語情報の占める割合は、たった7%なのです。
まずは「お客様とどうやってうまく話そう」と考えるより、見た目や表情、身だしなみといった視覚情報、そして声のトーンなどの聴覚情報を整えていく方が、お客様の信頼を得るには近道といえるのです。
作業後に、お客様に「爽やかな人だった」「きちんとした人だった」と感じていただけると、次の作業依頼や他のお客様へのご紹介に繋がる可能性が高くなります。
家事代行のお仕事では、お客様からオーダーされた内容通りに作業ができるのは当たり前です。単に作業をこなすのではなく、『お客様に満足していただけける』作業をするために、お客様側の心理について理解を深めていきましょう。
まず、お客様は『敬意を払ってほしい心理』をお持ちです。お客様は、常に気持ちよく親切に、そして大切に扱われたいと思っています。
私たちはお客様のご自宅に入らせていただく『特別な他人』です。身内ではないのにプライベートな空間に入るという特殊な関係性のなかで、私たちはお仕事をしています。
このことを理解していないと、お客様に嫌な思いをさせてしまうことがあります。
例えば、『特別な他人』である私たちが、家の中が散らかっているのを見て、思わず「うわっ」という表情を浮かべたり、スタッフ同士でコソコソ話すのをご覧になったら、お客様はどう感じられるでしょうか?身内ではない人に『馬鹿にされた、恥をかかされた』と感じ、大きな不快感を抱かれるでしょう。お客様が誤解されないような表情や行動を意識することはとても大切です。
また、お客様は、『スタッフを独占したい』という心理をお持ちです。担当者を独占し、自分だけに敬意を払って欲しいと考えていらっしゃいます。お客様が希望していないのにスタッフが変更になるのは、お客様にすると非常にストレスです。
「最後まで責任を持って担当します」ということを実践するには、体調管理が大切です。
『私がここの担当者なのだ』と自覚して、最後まで責任を持って担当していきましょう。
お客様は『損をしたくない』とも思ってらっしゃいます。支払った金額相当のサービスを受けるのは当然で、『1円でも損をしたくない』と思っています。
「今日は早く終わったから帰ってしまおう」…これは絶対にだめです。もし予定より早く作業が進んだ場合は、通常できない箇所を掃除するようにしましょう。
お客様は『なるべく安くて良い物』に対し、できれば他の人より得をしてそのサービスを受けたいと考えていらっしゃいます。金銭的な面やサービス面で『ほかの人よりよく扱われたい』と思っていらっしゃいます。このお客様の『損したくない心理』も理解するようにしましょう。
思い通りにならないと不満を感じ、無理と分かっていても『自分だけは何とかしてほしい』と思われる方もいらっしゃいます。思い通りならないと、オーダー通りの作業を実施したとしても不満を抱かれる可能性があります。ですので、お客様から「これもやってくれますか?」と言われたときに、「いえ、無理です」の言葉だけで返すことは避けましょう。お客様と相談してその日の作業内容を調整するか、「次回の作業でいかがでしょうか?」などと相談して、お客様からの要望を受け入れた返答を心がけるとよいでしょう。
ここまでお伝えしたことは、『自分が客としてサービスを受ける側だったら』と考えると非常に理解しやすいと思います。
お客様はどのような心理をお持ちなのか理解して作業していくと、お客様の満足度が向上し、自分自身の遣り甲斐や喜びにも繋がっていきますよ。
基本的なことですが、信頼を得るために『時間を守ること』はとても大切です。
では、時間を守るために必要なことはなんでしょうか?
それは、現場に行く時に、あらかじめ時間が合わせてある時計を身に着けていくことです。
「お客様の家で時計を見れば大丈夫」と思う方もいるかもしれません。
ですが、私の実体験として、お客様の家の時計が合っていない、ということは少なくありません。ですので、現場に行くときは必ず時計を身に着け、自分の時計で正確な時間を把握するようにしましょう。
そして、作業中はどれだけ時間がかかったのか随時チェックしましょう。パソナライフケアでは、2時間から依頼を受けていますが、作業していると『時間が足りない』と感じることもあるのではないでしょうか?
家事代行のお仕事では「時間」に気を配ることがとても大切です。この時間に関しては、今後コラムの中で詳しくお伝えしていきます。
お客様のご自宅の物を破損すると、信頼を一気に失ってしまいます。どれだけ作業スピードが速くても、『物を壊す』というたったひとつのことで、あっという間に信頼を失うのです。
もちろん、壊そうと思って壊す人は誰もいないでしょう。
では、物を破損しないようにするために、皆さんはどんなことを心がけていますか?
忙しいときこそ、細心の注意をはらって丁寧に物を扱うようにしなくてはなりません。例えば、お客様の大切な物を動かすときは、片手ではなく必ず両手で運ぶこと。
高価な物であれば、その物自体を移動せずに掃除することも必要かもしれません。
いずれにせよ、お客様の大切な物を破損させないよう十分に気をつけて作業していきましょう。